外壁や屋根の耐用年数に関する基礎知識
世の中には色々な情報が錯綜しています。
業者の情報は、常に工事をさせようとする方向に誘導しますし、どこまですれば良いのか本当のところは分かりづらいですね。
ここでは信頼できる業者の外には出せない本音の部分を書いていきますので、外壁や屋根の基礎知識として頭の片隅に置いていただければと思います。
窯業系サイディング外壁について
最も多く使われているのが「窯業系サイディング」と呼ばれる外壁材です。
窯業系サイディングは、デザインや色が非常に豊富で、おしゃれなのが特徴です。
セメントなどの無機結合材を木繊維などで補強し強化させたものが一般的で、工場できれいに塗装されています。
セメントが主剤ですから重量は意外と重く、1㎡当たり約17kgあります。重量的にはモルタルの半分ほどの重量です。
耐用年数は約30年とされています。
この耐用年数の意味は次のように考えてください。
・防水性能としては、何もしなくても約30年もつ。
⇒ 傷みが出てきますが使い潰す感じです。車なら乗り潰す感じ。
・見た目の性能としては約10年で手入れが必要。
⇒ 見た目の綺麗さを維持するには定期的な塗装が必要です。
新築から10年経過すると、最初の防水塗装が雨、紫外線、夏冬の温度差などで傷み、防水が弱くなってきます。
それでも建物構造にまだ雨水が染み込むことはありません。
なぜなら、サイディングの下地には防水シートがきっちりと貼られているからです。
外壁塗装で耐用年数が伸びる
それでは外壁塗装の意味は何かというと、新築から10年目に外壁塗装をすると、耐用年数が約10年伸びることです。
耐用年数が伸びること。これが外壁塗装の目的です。
つまり、新築時から見て耐用年数は約40年になるということ。
言い換えれば、塗装が傷み始めた10年目に外壁を塗装すると、その時点でほぼ新品の状態(耐用年数約30年)に戻りますということらしいです。
これが、新築から15年目に外壁塗装をすると、耐用年数は約5年しか伸びないと言われます。
つまり、新築時から見て耐用年数は約35年になるということ。
以後はおおむね10年から15年毎に塗装し直すと、その時点での傷み具合に応じて耐用年数が若干伸びますが、2回目以降の外壁塗装は主に外観の綺麗さを保つ目的です。
窯業系サイディングの傷んだ例
窯業系サイディングは、実はのこぎりで切れるような素材であることをご存知でしょうか。セメントで固めてあるので強そうに見えますが、意外と弱いのです。
窯業系サイディングを塗装しないで放置していると、見た目は変わらなく見えても、本当に注意してみると塗装が小さな点のように剥がれているのが分かります。
約18年経過した窯業系サイディング
これらならまだ、今なら塗装でなんとかなりそうです。放置すれば剥がれてきます。
もし塗装しないまま放置すると、出隅(でずみ)と言われる角の部分が剥がれてくるのはよくありますし、サイディングの下端は傷みやすいので剥がれてきます。
これでも建物の防水としては防水シートがあるので、まだ10年ほど大丈夫だそうです。でも見た目が悪いですね。
窯業系サイディングにひび割れなどが出てくると塗装してもすぐに剥がれてくるので、金属板で補修するか部分的な張替えが必要になってきます。
※金属板で補修することを業界では板金(ばんきん)を当てると言います。
ここは誤解している方が多いのですが、塗装の傷みは塗装で直りますが、サイディング自体の傷みは塗装では直りません。
サイディング自体の傷みは、パテで埋めても一時的に過ぎず、根本的にはその部分を取り替えるか、金属板を加工して当てて補修します。
1カ所でもサイディングが割れてくると、劣化が進んでいるので、次第に色々なところが少しづつ割れたり剥がれてきます。
手遅れにならないよう、普段から注意して観察することが大事になってきます。
サイディングの傷みは、当分は防水シートが効いていますので雨漏りはありませんが、いずれ内部に雨水が入ってくると傷みが加速しますから、何らかの応急処置が必要です。
応急処置としてDIYで塗装した例
応急的に塗装したところと、塗装していないところでは、表面のつやが全然違いますね。塗装していないところは、雨が降るとサイディング自体に雨水が染み込んでしまうのが分かります。
応急処置は本格的な外壁塗装をするまでのものです。
窯業系サイディングのカバー工法は湿気対策が必要
窯業系サイディングが傷んだら、外壁塗装や外壁張替えがよく行われます。
窯業系サイディングの張替えは、一般的にカバー工法が使われています。
カバー工法とは、古いサイディングの上に新しいサイディングを張る工法です。工事が簡単で日数も短くて済むのでよく行われています。
ご覧のとおり、古いサイディングと新しいサイディングの間に空間ができて、湿気が溜まりやすく、実際、下手な工事だと、カビやシロアリの発生の原因にもなっています。
カバー工法では、湿気が抜けるように内部の通気を考慮する必要があります。
また、外壁の重量がモルタル外壁並みに重くなるので、耐震性能の低下も懸念されます。
なので最近は、窯業系サイディングのカバー工法よりも金属サイディングのカバー工法を勧められることが多いです。
金属サイディングの代表であるガルバリウム鋼板は、1㎡当たり3.5kgと軽く、通気性も良好なのでカバー工法にはよく使われます。
ガルバリウム鋼板外壁について
最近は、窯業系サイディングではなく、最初からガルバリウム鋼板を張る住宅が増えています。
よく見かけるのが凸凹が連続した形態の金属板です。
ガルバリウム鋼板は、鉄板の表面にアルミニウム・亜鉛・珪素の合金をメッキしたものです。1㎡当たり3.5kgと軽く、非常に丈夫な材質です。
耐久性が高く、メンテンスフリーで耐用年数は約40年と言われます。難点は高価なことです。
よく、ガルバリウム鋼板も10年ごとの塗装が必要というのを見かけますが、防水性能で言えば塗装は必要ありません。腐食も殆どありません。
※ ただし、エアコンの設置などガルバリウム鋼板に穴を開ける時は、金属の削り屑が飛び散らないように慎重な工事が必要です。飛び散った金属くずが当たるとサビが生じます。
よほど塗装が薄くなったり斑になったりすると見た目が悪いので塗装することもあると思いますが、通常、日頃のメンテナンスは、外から水をかけて汚れを洗い流す程度で十分です。
最初からガルバリウム鋼板張りにするのが、メンテナンスと耐久性の点ではおすすめです。
化粧スレート屋根について
今でも重量が軽く安価な化粧スレート屋根がよく使われます。
でも屋根材として一番多いのが、実はガルバリウム鋼板を用いた金属屋根です。平瓦屋根もまだまだ見かけます。
スレート屋根の最大のメリットは、屋根が軽いので地震に強いことです。
その反面、薄く色褪せたり苔が生えたりして汚くなりやすいのが難点です。
でも耐用年数は約30年は持ちます。
その理由は次のとおりです。
1.下地に防水シートが貼られているため、少々の雨水の侵入では雨漏りしないこと。
2.標準工法は、たて重ね150mm以上(屋根)の重ね葺き工法であること。
一般的なスレートのサイズは幅91cm×高さ41.4cmです。30cmづつ重ねて葺いていきます。
すると、どの部分も必ず2枚重ねになります。
次の画像は適当なものが見つからないためネット画像をお借りしました。
スレートは1枚で約15年持つと言われるため、2枚重ねでは30年持つことになります。
ただ見た目は色褪せて汚くなりますが、防水性能としてはとくに問題ありません。
なので、無理に屋根塗装をする必要は有りません。
これは意外でしょう。
実際、古いお宅でスレートは色褪せているのにそのままというお宅もいくらでもありますよね。
耐用年数が来て屋根を葺き替えるときは、スレートでもいいですが、カバー工法でガルバリウム鋼板葺きにしてもいいですね。ガルバリウム屋根はメンテナンスフリーで約40年持つと言われます。
窯業系サイディングやスレート屋根は、よく言われるよりは外壁も屋根も持ちます。